「家飲み」だからこそ、自由に日本酒カクテルを楽しむ
私の家飲みスタイル「家飲み」を「最高の時間」とするうえで、必要なのは、その時間を「特別な時間」にすることである。どうすれば、特別な時間になるか。それは、人それぞれの価値観によって、さまざまであろうが、「誰にも気兼ねなく」、「自由」といったものは、家飲みならではである。
さて、少し日本酒の世界に足を踏み入れた時に、その素晴らしさや奥深さに感嘆する一方、どことなく窮屈な感じを受けるというご意見を良く聞く。それは、おそらく、米や酵母の種類であったり、成分値であったり、まるで、工業製品のような材料と作り方、あるいは科学的に分析された素性といった、その理解には、ある程度の知識が必要な情報が降り注いできたり、飲み頃の温度や相性の良い料理、適した器。さらには、「この酒は、こう飲むべきだ」といった、プロからの薦め、伝統や作法…。それらはもちろん、日本酒やプロの価値として揺ぎ無きものであり、日本酒の価値をおおいに構成する要素であるが、この段階では、楽しむというよりも、楽しまされるというほうが適切であり、ここに一抹の窮屈さを感じることもあると考える。
では、少々、こんな世界から離れ、日本酒を誰にも気兼ねなく、自由に楽しむ方法のひとつが、家飲みでの「日本酒カクテル」である。カクテルを定義するとすれば「酒+他の材料」であり、すなわち「自由」以外の何物でも無い。また、家飲みなら「えー、日本酒をカクテルにするなんて!」といった人様の目を気にせず、いくらでも試し、楽しめる。これだけでも、実に創作意欲が湧きたてられ、レシピ創造から作成(調合)、その作品の自己を含めた身の回りの方々の批評までを「特別な時間」にすることができる。
「家飲み」日本酒カクテルを楽しむ極意
1.「家飲み」だからこそ、少しだけ手間をかけよう
いくら、カクテルとは「酒+他の材料」だからといって、たとえば、日本酒を炭酸水で割るだけ、フルーツジュースと割るだけというようなものでは、結果的に、それが自分好みであり美味しかったとしても、「特別な時間」には不釣り合いである。「家飲み」だからこそ、そこはそこで、少しだけ手間をかけた日本酒カクテルの作成こそが、その一連の時間を「特別な時間」にすることは間違い無い。
2.「家飲み」だからこそ、常識を打ち破る自由な発想で
実は、カクテルの世界にも常識なるものが存在する。こういう酒とは、こういう材料。作り方はこう‥‥と、これもキリが無い。最近では、日本酒カクテルのレシピも多く出回るが、「家飲み」での日本酒カクテルは、これらをヒントにこそするものの、是非、自由な発想、かつ常識を打ち破るような日本酒カクテル開発に取り組みたい。それが楽しいのである。
3.「家飲み」だからこそ、不味くたって楽しめる
時には、これが、お店で出てきたものだったら笑顔にはなれないほど、「不味‥‥」なんてカクテルが出来上がることもある。しかし、「家飲み」の全ては、自己責任。不味い時は、笑顔で「不味…」と言える。失敗を恐れず、失敗も含めて楽しむ「特別な時間」にしよう。
お薦め「家飲み」日本酒カクテル
恥を承知で、私個人が好んでいる「家飲み日本酒カクテル」をご紹介する。好みは多様ゆえ、私好みというだけであり、決してお薦めという訳では無いが、「家飲み日本酒カクテル」考案の発想の方向性としては、是非、ヒントにしていただければ幸いである。
尚、ネーミングは、これまで考えたことも無かったので、本著に際し、即興で付けてみたが、「家飲み日本酒カクテル」で一番、難しいのが、このネーミングであることに気付かされた。しかし、自分や共に楽しむ人だけが分かればいいと考えれば、名は体を表さなくても良い訳なので、何と自由なことか。
■日本酒ジンジャー・ハイボール
ベースとなる日本酒の甘味を考慮し、甘さを控えた手作りジンジャーシロップ。手作りならではの鮮烈な生姜の風味と、注ぎ入れる炭酸との日本酒の調和が何とも言えない。好みの甘味になるような日本酒を選ぶと良い。
<材料>
・日本酒 *甘味をポイントに好みのものを
・手作り「ジンジャーシロップ」
<作り方>
① 生姜をスライスしグラニュー糖(適量)と混ぜ合わせ一晩おく
② 鍋に①と適量の水を入れ中火で15分程煮る
③ 生姜を取り出し、完成
・炭酸水
・レモン汁(お好みで)
<レシピ>
大きめのグラスに氷を入れ、日本酒(1/3)、手作りジンジャーシロップ(1/3)を入れ、炭酸水(1/3)を注ぎ入れる。お好みでレモン汁を入れると爽やかさが増す。また、甘味は使う日本酒の甘味で調整するのがお薦め。シロップを作った際の生姜を、添え物として、かじりながら楽しむのもお薦め。
■レモンだらけの熟成酒
良くも悪くもクセのある熟成酒を、杯を重ねるごとに変化させながら楽しむカクテル。このカクテルは、杯を重ねることに意味があるので、食後などに、ゆっくり楽しむのがお薦め。
<材料>
・日本酒「古酒」
・冷凍レモン(櫛形にカットしたものを冷凍)
・芋けんぴ
<レシピ>
小さめのグラス(櫛形のレモンで満たせるサイズ)を冷凍レモンで満たし、「古酒」を注ぎ入れる。芋けんぴをマドラー変わりに、楽しむのがお薦め。2杯目以降は、グラスのレモンはそのまま、温度が上がるにつれ変化する味わいと香りを楽しめる。
■ぬる燗豆乳エッグノッグ
日本酒はお燗も美味しい。ブランデーを使ったホットカクテルの日本酒バージョンとも言えるが、その材料から、日本ならではの食文化と言われる「口内調味」での美味しい組み合わせをカクテル化したとも言える。白だしの代わりに砂糖などを使って、甘いカクテルにアレンジしても楽しめる。
<材料>
・日本酒
・豆乳
・全卵
・白だし
<レシピ>
鍋に、日本酒(1/2)、豆乳(1/4)、全卵(1/4)に適量の白だしを入れ温める。この際、絶えずかき混ぜながら、温度は45℃ぐらいまでにする(卵が凝固しない温度)。マグカップなどに入れ、表面をミルクフォーマー(100均などで売ってるもの)で
泡立て、せっかくなので粉山椒をお好みでふりかけ、香りを楽しむ。
WRITERこの記事を書いた人
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI) 専務理事・事務局長
大森 清隆
都内ホテル勤務(レストランサービス)を経て、酒類輸出入卸売商社に勤務。
特に、清酒輸出卸売から現地輸入卸売までの一環事業を責任者として担当し、マーケティング・セールスプロモーション・取扱者教育の指揮を執った。
また、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会の理事を務めるかたわら、消費者が外観か... もっとみる
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